シャービックが冷えるまで

100円ローソンでシャービックの箱を見るたび思い出すひとがいる。


19日のライブで共演することになった、歌人雪舟えまさん。初めて彼女のホームページに訪れたのは3年前だったと思う。そんな最近だったっけ、とも思うけど、手元にある穂村弘さんのインタビューが載ったフリーペーパー「PLUS」の表紙には2007 springって書いてある。フリーペーパーと呼ぶには恐れ多いほどの情報量、私はその雑誌を手に取るまで穂村弘さんのことも、雪舟えまさんのことも全く知らなかった。サラダ記念日ぐらいは読んだことがあったけど、短歌にそこまで興味があったわけでもなかった。確か大学の帰りに、電車の中でぱらぱらと穂村さんのインタビューを読んだ。
そのインタビューの中では、穂村さんの短歌ではなく・・・いや、穂村さんの短歌なんだけど、明らかに男の人のことばではない短歌がいくつか引用されていた。それらは2001年刊行の「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」という本からの引用らしかった。

「十二階かんむり売り場でございます」月のあかりの屋上に出る (〇二六頁)


穂村さんは本文中でなんども「まみ」という女の子に言及していた。まみから手紙が来た話。女性には四文字の名前があるね、とメールを送った数分後に、四文字の女の子の名前を二十六個*1考えて送ってきた話。その直後に、こんどは六文字の男の子の名前を二十六個送ってきた話。
そしてインタビューの最後、インタビュアーに向けて穂村さんが放った言葉は、「(まみの話は全部、)嘘かもしれないよ。」だった。
私はもう気になって仕方なくなってしまって、とりあえず図書館に行って穂村弘さんの「シンジケート」を借りて一気に読んだ。そこには、まみは出てこなかったけど、わたしは穂村さんの短歌をすごく気に入った。その後図書館にあった穂村さんが関わる本は全て読んだ。


ある日、それでもやっぱり「まみ」の正体が知りたくて、パソコンの前に座っていろいろ検索していたら、(どういうルートか忘れたけれど)雪舟えまさんという歌人のホームページに辿り着いた。なんとなく文章の感じで、あれっと思った。ペンネームは、雪舟えま、だけれど、掲示板の名前は「まみ」だった。
まみだ!!!
と、思った。


※以上、実在するかわからなかった人物として思いっきり呼び捨てしてごめんなさい。


まみさんはホームページ上で、当時流行っていた「〜の100の質問」(ホームページを管理する人が、自己紹介の一環として、誰かのつくった100の質問に勝手に答えるやつ)の形式にそった「シャービックが冷えるまでの100の質問」をつくって公開していて、それに自らも回答していた。
わたしはまみさんの回答を読んでいるうちにどんどん引き込まれ、とある質問に対する彼女の答えに完全にやられてしまった。
自分も答えようかな、と思ったけれど、それよりしっくりくる回答ができそうもなかったのでとりあえずあきらめた。掲示板も思い出すたびのぞいていたけれど、結局、初めて書き込んだのは2010年になってからだった。


わたしはシャービックを食べたことがまだない。
いつかシャービックを買ってきて冷凍庫で冷やすようなことがあったら、そのときこそはこの質問に答えたいと思っています。


まだちょっと書き足りないけど、とりあえず今日はおわり。

*1:「すあしな」「くもりみ」とか。いまだに思い出してはうっとりする。