土星を見るひと / 椎名誠(2)

読了。


これは、すごく、いいですよ。


良くも悪くも「国分寺書店のオババ」の大胆不敵なイメージが強烈だったのですが、この小説集では(それぞれ書かれた時期は違うようですが)何も大きいことは起こらず、特に大きく感情を揺さぶるようなこともなく、短いけど確実に脳内イメージに刷り込まれてしまう確固とした世界が淡々とした口調で語られています。正直びっくりしました。もしかすると彼の「素」のようなものはこちらに近いのかもしれません。


収録された7話のなかで「うねり」を1話目に持ってきたのも、いいなあ、と思います。そして7話の間につながりは全くといっていいほど無く、それぞれ違う空気が流れています*1が、同じひとが書いているということだけはとてもよくわかります。


たまたま文章のチャンネルが合うというのは、いくらベストセラーの本を読んでもなかなかありそうで無いことで、これは本当に読んでよかった。とりあえず次は旅行記に手を出してみようかと思います。

*1:他のひとの短編集ではちょっと感じたことのない珍しい印象でした。数を読んでないのでなんとも言えませんが