十年:2011年8月
半月のゴーヤが笑う眼のようでまだひとりでも歩けるしるし
シンハーに氷を入れて濡れた手で星占いを触ってはだめ
いつか家族だったことがあるのかもしれない赤いヨーヨーを割る
あいこしか出せないふたりではどこへも行けないねとあきらめて寝る
五五分ぴったりに現れるあなたの後れ毛は火のように揺れ
ジョナサンに着てったワンピースで横になる公衆電話の数ひとつ
眠いままいちじくの食べ方を調べ安心して手でふたつに割る
夜はわるいことばかり考えてしまうのを忘れていた祭りのように
会うと時空がゆがむ人たち十年前と十年後にはさまれている
もういない猫の話をするきみとここで会うのははじめてでした